ツキアカリテラス

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夏の成果はすぐには現れない

大学入試に向けて、夏の頑張りが大事だということは今更言うまでもない。比較的自由に時間を管理することのできるこの夏にどれだけ基礎を固めるか、苦手意識を払拭するか、得意分野をさらに伸ばすかが合格のカギを握る。

 

おまけに夏休みは予備校や塾がこぞって模試を行う時期でもある。大学入試であれば、共通テスト模試はもちろん、大学別の模試(いわゆる冠模試)も行われる。

 

ところが、それらを受けた後の受験生の声は大抵の場合、沈んだものばかりである。「また英語ができなかった・・・」「オープンの数学で1完もできなかった・・・」などである。こういう結果を目の当たりにすると、この夏、あれだけ頑張ったのになぜできないんだろう、ちっとも力がついていないんじゃないか、間に合うのか、と余計に落ち込み、さらには、今自分がやっている勉強法を全否定することに走り出すケースもたまにある。

 

しかし待って欲しい。この時期に私が受験生に対していつも言うことがある。それはタイトルにもある「夏の成果はすぐには現れない」である。勉強というのは継続が難しい。というのも、勉強の効果がすぐに現れることはほとんどないからだ。ダイエットと似たようなものである。そりゃあ、全く勉強しておらず、基本知識のインプットが全くできていない状況で夏に猛勉強してインプットを重ねたとすると飛躍的に点数は上がるかもしれない。しかし、多くの大学入試で問われるような、思考力を問うようなスタイルの問題は、その訓練をしてもすぐには解けるようにはならないのだ。

 

実際、私も受験生時代は物理と地理が非常に苦手であった。地理に関しては全くインプットができていなかったこともあり、割とすぐに点数は伸びたものの、物理はやってもやっても、かえって分からなくなることが多く、やや泥沼にはまっていた。しかし、ここを克服しないと合格はあり得ない(なにせ当時浪人していたし)と思い、考えることを諦めなかった。

 

そうすると、その年の冬、急にあらゆる問題がしっかり論理的な道筋を立てて解くことができるようになった。それまで全く解ける気がしなかったのに、である。これは不思議な体験であった。おそらく人生で経験した不思議な体験の3本の指に入ると思う。私はよく「熟成期間が必要」という言い方をするのだが、思考し続けることで何かしらがネットワークで繋がるのだろうと思う(非科学的かつ言語化ができず申し訳ない)。それ以降は全く物理に対して苦手意識がなくなった。

 

受験生を見ていても、普段の小テストなどでは成果を出していても、もし本番でその成果が現れるのは、夏にしっかり頑張ったことを前提として、だいたい秋くらいだと思う。9月でもその成果が現れるのはごく稀である。だから、今成果がでても焦ることはないから安心するように伝えるのが、私にとってこの時期の恒例行事である。

 

一番やってはいけないのは、先述の通り、成果が出ないと言って今やっている勉強をストップさせてしまうことだ。まだまだ伸びている最中なのにそこで成長の芽を摘むのはよろしくない。もちろん方向性が誤っている勉強であれば適宜修正していかなければならないが、思考の訓練は継続していくべきだと思う。精神的に苦しい作業かもしれないが、だからこそメンタルの管理というのも受験勉強にとっては大切だし、傍にいる友人や大人たちに頼って欲しい。自分を信頼してくれる人たち、自分よりも人生経験が豊富な人たちからのサポートは馬鹿にはできないと思う。