私教育における「商品」と「顧客」
私教育においては、授業やそれを展開する講師はサービスであり、かつ商品である。
この考え方には賛否両論ある気がする。たしかに人間をモノ扱いすることは私もいただけないと思う。しかし顧客目線で考えたら、それ以外の形容のしかたはあり得ないと思うから、我々がどんなに嫌がっても仕方がないと思う。
そういえば、この「顧客」という表現も嫌がる人は嫌がる。それはそれで否定しないし、実際、私もあまり使いたくない。就活でこういう表現を聞いたとき、嫌悪感を持ったし、今でも生徒や保護者に向かって「お客様」呼ばわりすることは絶対にしないし、来客の際も「いらっしゃいませ」とは絶対に言わない。
しかし、世間一般的に見て我々はサービス業に携わる人間であり、サービスそのものでもある。そして、生徒や保護者はそのサービスを享受する人間である。ではそれぞれをどう表現する?と言われたら、「商品」「顧客」以外に適切な表現は見当たらないのではないか。どうもこういう言い回しについて、私だけなのかもしれないが、キレイゴトで考えてしまっている気がするのだ。
確かに、“公”教育では「商品」「顧客」という表現は適切ではないのは明らかだ。しかし私教育はその限りではない。何だか、中途半端に公教育のこういった聖域を都合よく自分のところに引っ張ってきているような気がしてならないのだ。これだけでもないような気はするけれど。我々がどれだけ公教育に近しいことをやっても、私教育の枠から出られないわけで、その点でサービス業という枠を出ることもできない。
多くのサービス業で、提供する側と享受する側の関係をそう表現することは特に問題がないのに、私教育では不適切だとみなされがちなのは一体なぜなのだろう。
ところで、先述の「お客様」呼ばわりしない、「いらっしゃいませ」と言わない、というのも我ながら随分と思い上がったというか、傲慢な考え方だなと思う。私も(私だけ?)教育の呪いにかかってしまっているのかもしれない。