ツキアカリテラス

tsuki-akr terrace

2022年度大阪大学入試(化学)を解いてみた

ここ数年ずっと難度は高止まりでしたが、今年は少し易しめだった気がします。ただし、一部で問題文の意図がとりづらく(たまに阪大ではあるのですが)、解きづらい問題があったほか、複数解答が考えられる問題があったので、パニックを誘いやすい問題だったのではと思います。

 

第1問

地殻中に主に存在する元素に関する総合問題。問2はなかなか考えさせられる問題。問4(1)は鉄の状態をどう表記するか迷う。原則として常温・常圧での状態なので固体で良いのだが、、、

 

第2問

モルヒネに関する問題。問1はどこまで理由を書けばいいのか悩ましい。本当はカルボニル基の存在まで言及しないといけない気がする。後半の平衡の問題はそこまで難しくないが、いずれも計算過程が求められるので時間がかかる。

 

第3問

問2の計算がやや煩雑だが、NもしくはOをとりあえず1として他がどれくらいなのかで見極めたい。Aの分子式は複数考えられるが、C12化合物の想定だろう。ナトリウムと反応したからといってヒドロキシ基と決めつけるとハマってしまうという意味では(構造決定で思い込みは禁物!)良い問題なのだが、、、

 

第4問

イオン交換樹脂に関する問題。全体的に難しくはないが、問6は難しい。もっとも、選択肢をみて、文章としておかしくないものを選べばほぼ解答は出せるのだが、、、

2022年度京都大学入試(化学)を解いてみた

数年ぶりの実質8問構成でした。

ただ、有機・高分子は割と解きやすかったことと、昨年度の第2問のような極めて難しい問題がなかったので、全体的な難度は昨年と変わらないか、やや易しくなったと思います。今回の第1問・第2問で顕著ですが、相変わらず京大は定量的考察を強く要求されます。このセットなら結晶の問題があってもいいのですが、今回は出題されませんでした。

 

第1問

(a) アルカリ土類金属に関する問題。後半の同定は計算が煩雑。うまく問題文が作られているので、必要な情報をちゃんと拾い上げられたかどうか。

 

(b) クロムに関する問題。反応式は十分な酸素があることから二酸化炭素が生じると推測することが可能。後半の平衡は成立する条件をもとに考えれば難しくはない。物質収支では二クロム酸イオンの扱いに注意。最後は式(6)は使わない方が無難。

 

第2問

(a) 分配平衡に関する問題。第1問(b)とアプローチは似ている。物質収支の関係を、二量体に注意して考えていく。ウができたかどうかがカギ。ここを間違えると後も雪崩式に間違えるので注意。問3は(5)式のカが分からなくても解答可能。

 

(b) U字管を用いた浸透圧の実験に関する問題。難問では典型的なものであるが、問7は差がつくかも。

 

第3問

見慣れない酸クロリドが扱われているが、結局COOHのOHをClに変えたものにすぎない。構造決定自体も大したことがないのでここはサクッと正解したい。

 

第4問

糖類に関する問題。

(a) Fisher投影式はここ数年ずっと出題が続いている。問2は立体配置に注意だが、2020年度(これは鬼ムズい、ここ10年の高分子の問題でも圧倒的に難)に比べるとずっと楽。

(b) 結局は結合の切断と酸化が同時に起こるのだと分かればそこまで難しくはない。例えば、図5でC4-C5はC5に直接OHが結合していないので切断されないことなどに注意しなければならない。反応の示し方はもっとシンプルに表されることが多いので、想定以上に難しく感じられたかもしれない。ところで、なぜ過ヨウ素酸という名前を伏せたのが謎。

最後もいつも通りに、そして最後くらいは突き放したい

もうすぐ国公立大学の前期試験が始まる。この時期になると、あちらこちらで激励のメッセージが発せられる。趣向を凝らしたものもあって見ていて面白い。あんなに厳しい先生が、実はこんなお茶目な一面を見せた、というのには、緊張しすぎる受験生の顔をほころばせてくれるかもしれない。

 

しかし、こういう時期だからこそ、私はあえて何も特別なことはしない。そりゃあもちろん無愛想に振る舞うわけにもいかないので、生徒と対話する機会があれば「じゃ頑張って」くらいは声を掛ける(昨日もそうした)。ただ、それ以上のことは言わないようにしている。それも、意識的にだ。

 

一番大きな理由は「自分がされると嫌だから」だ。随分とワガママな理由ではあるが、自分がされて嫌なことは他人にしたくないので。

 

まあそれは4分の1くらいは冗談で、もっともらしい理由を挙げるならば、前にも書いたような気がするが、受験を特別なイベントにしたくない、というのがある。あちらこちらで激励されたらかえって萎縮しちゃうんじゃないか、という危惧を持たずにはいられないのだ。少なくとも自分はそうなると思う。

 

受験ではいつも通りの力を出すこと、そしてそのために平常心が一番大事だと思っている。だからこそ、いつも通りの声かけをしてあげたいのだ。

 

そしてもう一つ。受験は自分をいかに信じるかが大切であると思っている。これまで机間指導で間違いを指摘してくれた、あの先生がいない。これまで問題を解く前に重要項目のまとめをしてくれた、あの先生がいない。頼れるのはここまで勉強してきた自分しかいないのだ。途中でミスをしているかどうかも自分自身で気づかなければならない。受験というのは孤独な営みなのである。

 

だからこそ、最後くらいは、一人で行ってこい、自分しか信じられないんだから、というスタンスで見送ってあげたいのだ。そういう意味で、あまり先生の姿をチラつかせたくない、というのも、特別な激励はあまり意図的にしない理由である。

 

陰ながら見守る、それだけでいいと思っている。どれだけ頑張ってきたか、どれだけ大事な舞台なのかは本人が一番知っているのだから、わざわざ言うことではないだろうと思う。

手帳で自由を手に入れ、所有欲を満たす

今週のお題「手帳」

 

その昔、時間管理だとか予定管理ってのは、人との約束事さえ把握できていればいいと思っていた。けれども、さすがに大学で研究室に入るとそうはいかなくなってきたので、後輩が持っていたのに惹かれて買ったのがほぼ日手帳である。思えばこれが自分の手帳遍歴の始まりだと思う。それまではどうやって時間管理をしていたか思い出せないのだ。ポケット手帳を使っていた気もするし、ガラケーで入力していた気もする。

 

それから社会人になってしばらくの間、ほぼ日手帳を使っていたが、色々あってほぼ日手帳以外の手帳を使おうと思い立ち、6〜7年ほど色々使ってみた。書店に並ぶメジャーどころのものは大概触ったと思う。ほぼ日手帳に出戻りすることもあった。スマホやらタブレットやらを活用して、デジタル化へのチャレンジもした。ただ、どれもしっくりこず、手帳ジプシーになっていた。

 

最近、バレットジャーナルというものの存在を知り、これはシンプルでなおかつ自由度の高い手帳だと感じ、昨年からロルバーンのダイアリーを使って実践。途切れ途切れながらも、なんとか1年継続できた(恥ずかしながらこれは自分にとっては大偉業である)。そして今年もロルバーンでバレットジャーナルを書いている。

 

振り返ると、私が手帳において譲れないものは何かが見えてきた気がする。ようやくこの歳になって。細かいところまでピックアップすればいくつかあるのだけど、特に重要視しているのが「所有欲」と「自由度」である。割と機能性についてはどうでもいいんだな、と無意識ながらに思っていたのは驚きである。

 

そもそも、これだけ飽き性な自分がなぜ何年もほぼ日手帳を使い続けてきたのか。それはほぼ日手帳が、アイコンとして完成度の高いものだったからだと思う。中身もさることながら、アート性の高いカバーが持っていて幸福感をもたらしてくれる。だから他の手帳はそんなに長く続かなかったんだろうなあと。

私は楽器を嗜むのだが、楽器を買うポイントで一番大事なものは「見た目」だと思っている。値段や質は二の次である。楽器にはなるべく触れないと上達しないのだが、見た目で惚れなきゃそもそもその楽器を使おうと思わないからだ。所有欲の高さがその楽器への愛着につながると思っている。それに通じるものがあるのかもしれない。

私がいま、バレットジャーナルを運用するツールとして用いているロルバーンもそういった所有欲を満たしてくれるノートだと思う。あのカラーリングがとてもいい。もちろん使いやすいというのもあるのだけど、私がロルバーンを推す理由はカバーや紙の色、つまりは見た目が一番大きい。

 

そしてもう一つの自由度。今ハマっているバレットジャーナルはそのカスタマイズ性の高さがウリでもある。様々なコンテンツを適宜挿入することができる優れたシステムだ。以前使っていたほぼ日手帳はバレットジャーナルにはかなわないけれど、1日1ページで高い自由度でもって好きなことを書けるのがウリである。

よくよく考えれば、私は動物占いでライオンなのだ。あと裏の動物?みたいなのもあるらしく、それはペガサスらしい。束縛を嫌い、自由を愛する王様キャラ。まあ悪く言えばワガママなのだが(笑)そういや思い返せば、人に指図されるのはすごく嫌だし、自分のやりたいスタイルでやることには強いこだわりを思っていたなあと思う。

たださすがに昨年やっていたバレットジャーナルは、自分用のアレンジが強すぎて、それゆえに途切れ途切れになっちゃっていたのかもしれない。自由を愛するとはいえども、物事は守破離の順で自分のものにしていかないといけない。今年はもう少し本家に近い形で続けていけたらなあと思う。

 

よく雑誌である手帳の特集が好きだ。みんな色々な工夫をされているなあと感心するのだけど、あれはまさにユーザーの価値観を写す鏡なのかもしれない。この人どんな人だろう?というのが垣間見えるから、手帳って面白いと思う。

2022年度共通テスト化学基礎を解いてみた

第1問

問1 案外難しい。①は化学式に惑わされないように注意。③は判断に迷うが、明らかに①が誤りなので正しいとする。

問2 これは基本事項ばかりなのでできてほしいところ。選択肢の作り方について、このような問題なら周期律だけで作りそうなところが、いろんな事項が盛り込まれている。これもセンター試験とは違ったトレンドになるのかも。

問3 見た目ほど難しくはない。これも問2同様の選択肢のつくり。過去にはあまり例がない気がする。

問4 問題文が長いが、飛ばし読みで解答可能。化学基礎としてはやや細かい知識かも。

問5 中和反応の基本。これは落とせない。

問6 モル濃度ではなく質量パーセントが与えられており、そこから物質量の大小を判断しなければならないので手間がかかる。中和時は電離度を考慮しないことに注意。

問7 基本的な中和反応の計算。これは落とせない。

問8 問題文は短めだが、それぞれの物質がどのような反応をするかを考えなければならず、難しい。試行調査でも中和反応に該当するもの、という出題があったので、この手の問題は今後要注意と思われる。

問9 酸化鉄中の鉄がすべて単体に変化することがわかれば反応式は不要。センター試験からよく出題されているタイプの計算問題。

問10電池に関する問題。落ち着いて考えれば正解できるはず。

 

第2問

問1 単純な知識問題。

問2 グラフの読み取りが必要で時間がかかる。しかも見慣れないグラフであるため、その場で「こういうグラフになっているのはどういうことだろう」と考えなければならない。理系で出題しても十分試験になると思われる。

問3 aはよくある問題。問題はb以降。状況把握力が問われる。蒸留液の濃度をもとに蒸留液および残留液におけるエタノールと水の質量を求める。cは蒸留液1の質量パーセントがわかればそれをもとにbと同様に考えればよい。化学というよりは数的思考が求められる。

 

2021年度から大きく難化したとはいいがたいが、それでも理系でも苦戦する問題も散見されるため、高得点をとるのはかなり難しいと思われる。

 

 

2022年度共通テスト化学を解いてみた

第1問

問1 これは単純な知識問題。

問2 まともに計算すると大変。分子を揃えるというのは計算によほど長けていないと気づけないかも。

問3 定性的に考えて二択に絞れる。あとは変化の仕方を考えればよい。状態方程式からゴリ押しで密度を導いてもよい。

問4 細かい知識が問われているが、④が明らかに謝り。

問5 aは標準的。bは最初気相の組成比が変わると思って計算地獄に陥ってしまった(笑)改めて問題文を読むと「組成は変わらない」と。であれば立式は難しくない。とは言え何が問われているかもちゃんと把握しないと遠回りしかねないので難しい。

 

第2問

問1 これも単純な知識問題。

問2 結局はただの酢酸(+塩化ナトリウム)水溶液。体積が変わることだけ注意。

問3 これも無駄にひねっている。(特に今年度のような時間がかかる問いが多いセットなら)素直に平衡定数を示せばいいのに、と。ただ、手順を増やすというのは問題を難しくする常套手段の一つなので、こういう傾向は続くかも。求められているのは何か、そしてそれを導くための方針は何かをスピーディに引き出すことが必要。

問4 aはこの手の問題でよくある水素原子と水素ガスの変換がないので比例計算して終わり。bは未反応の物質が含まれていることに混乱しなければ簡単。cは反応式を自分で導く必要がある。おそらくはbが誘導の形になっているのでは。

 

第3問

問1 構成するイオンがたくさんあり、それぞれの操作でどのような変化が起こるかを考えなければならないので、時間がかかる。でもこれはすごくいい問題。

問2 過不足なく反応するのは最大量得られるとき。類題をやったことがないと難しかったかもしれない。

問3 aは簡単。bは類題の経験がないと難しい。cは最小限、とあるので過不足なく反応させるために必要な量を考えればよい。

 

第4問

問1 ②が案外難しいかもしれない。このように、見慣れない問いを既存の知識を運用して解く問題は今後増えるかも。

問2 配向性を知らなくても生成物からメタ位には置換されないことがわかる。これもすごく良い問題。

問3 細かい知識がところどころあるものの、⑤が明らかに誤りと分かるのでそれほど難しくはないか。

問4 aはどのような反応を経てできるかがわかれば容易。bは官能基の有無で絞り込んで元素分析(逆でもいい)。落ち着いて解けばいけるはず。

問5 分子の形が対称であればヒドロキシ酸は1種類しか得られないことに気づけば早い。

 

第5問

問1 単純な知識問題。④はポリ「アセチレン」であることに注意。

問2 類題をやったことがあれば楽(というより頻出なので類題はほぼ全員経験しているはずだが)。bはある程度熱化学方程式の扱いに慣れていても難しい。見慣れない設定で同じことができるかを問うている。cは1.0秒から6.0秒という引っかかりやすい設定であることに注意(多分グラフが通る座標のため、こうなったんだろうなあと)。dは典型的だが、これも複数の手順が必要。まずは速度式を求める必要がある。

 

ひねりにひねった問題が多く、標準的な問題でも時間が取られる形になっており、解けなかった、というよりは時間が足りなかった受験生が多かったのではないか(これは化学だけでなく他の科目でもそう)。しかし、よく練られており、解答の方針を論理的に立てる訓練としては良いので、二次・私大を控える受験生でも解き直しをする意義は大きいと思う。

遅ればせながら新年の挨拶がわりに

だいぶ間が空いてしまった。前回の投稿が31日前なのでかれこれ1ヶ月だ。

 

もはや私の分身、いや体の一部である「三日坊主」がついに姿を現したのか、というと、そうでもない。単に忙しかったのだ。なにせこの業界は冬場がとにかく繁忙期である。ただ授業をして丸一日が終わる、ということも珍しくなく、まさに年末年始はそんな過ごし方だった。

 

でもそんな中で、私自身、仕事以外のことにどれだけ労力を割くのかということはずっと考えていた、というか悩んでいた。

 

思えば、コロナがやってきてから、不確定な未来の中で、どんな業務が空から降ってくるかなんてのも想像しがたく、どうとでも来やがれ、みたいなスタンスでただただ降りてきた仕事を捌くようなスタイルになった。当然どこかで無理がくる。

 

そんな中で、自分を大事にすることを忘れたのかもしれない。自分がどれだけしんどくても、犠牲になってでも、他の人を守る、他の人に幸せを与える。もちろんそのスタンスはコロナ前から変わらないのだが、去年はより一層それに拍車をかけてしまっていたなあ、と思う。どこかで満ち足りない自分がいたことには薄々気づいていたし、滅私奉公モードになって、じゃあ色々うまく回ったのかというと、案外そうでもなかった。

 

そして、ここ数日、仕事も落ち着きを取り戻しつつあり、また新年を迎えたということで、改めて自分のライフスタイルを見直してみた。さすがに自分をないがしろにしすぎだろと思った。

 

もっと楽しいことをやろう、仕事から離れたところに身を置いてみよう、もっと変化を自分に与えて刺激を与えよう。このブログも自分に彩りを与える一つだ。自分の内面にあるものを表現する場として大事な存在だ。ぼちぼちと続けていこう。

 

ということで、本年もよろしくお願いします。