ツキアカリテラス

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【大学入試】夏休み明けの基礎定着確認リスト(有機化学編)

前回、前々回の続き。もう9月だけど許してください。思いついたのが一昨日なので、、

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無機化学は理論化学の具体例的な話が多く、理論化学とセットでおさえると相乗効果で覚えやすくなるのだけど、有機化学は割と純粋に暗記しなければならないことが多い。一応理屈はないことはないのだけど、大学レベルになってしまうので。最近の大学入試ではそれを下ろしてきたような問題も散見されるのだけど、やはり基本は教科書レベルの知識を覚えることである。特に芳香族化合物は多岐に渡るので、反応系統図を書くなどして泥臭く勉強していく必要がある。では、以下、チェックリストです。

 

1.異性体

  • C4H10、C4H10O、C4H8までは難なくすべての構造を書ける(立体異性体も区別する)
  • 元素分析の結果から(燃焼、質量分析ともに)組成式分子式を求められる
  • シスートランス異性体をもつ化合物を判断できる
  • 鏡像異性体をもつ化合物を判断できる

2.脂肪族炭化水素

  • アルカンの置換反応
  • アルケンの付加反応
  • アルキンの付加反応
  • アセチレンと水の反応

3.アルコール

  • アルコールとNaの反応
  • アルコールの酸化、それによる級数の判別
  • アルコールの脱水(温度条件に注意)
  • アルデヒドの検出反応2つ
  • ヨードホルム反応で検出される部分構造
  • エステルの合成
  • エステルのけん化
  • 油脂の構造(鏡像異性体の有無、脂肪酸の縮合の場合の数)
  • 飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の違い、それらからなる油脂の性質の違い
  • セッケンの性質(水溶液の液性、水中での形態、油汚れの落とし方、硬水)
  • 合成洗剤とセッケンの違い

4.芳香族化合物

  • オルト、メタ、パラの判別
  • 置換反応(ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化)
  • 置換反応における配向性
  • 付加反応
  • 側鎖の酸化
  • V2O5酸化
  • フェノールの製法(アルカリ融解、ダウ法、クメン法)
  • サリチル酸の合成
  • アセチルサリチル酸の合成と用途
  • サリチル酸メチルの合成と用途
  • ニトロベンゼンの還元
  • アニリンのジアゾ化
  • ジアゾカップリングとその生成物の用途

 

【大学入試】夏休み明けの基礎定着確認リスト(無機化学編)

前回の続き。今回は無機化学です。

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1.17族元素

  • ハロゲンの単体:沸点の大小、色、酸化力の大小
  • ハロゲン単体と水の反応(フッ素と塩素)
  • ヨウ素がヨウ化カリウム水溶液に溶ける理由
  • 塩素:製法3つ(MnO2と濃塩酸、さらし粉と希塩酸、電気分解
  • ハロゲン化水素:沸点、酸性の強さ
  • ハロゲン化水素の製法(フッ化水素、塩化水素)

 

2.16族元素

  • 同素体(酸素、硫黄)
  • 過酸化水素の反応(酸化剤、還元剤)
  • 酸化物の分類
  • オゾンの酸化剤としての反応
  • 硫化水素の性質(色、におい、酸性の強さ、酸化還元)
  • 硫化水素の製法
  • 二酸化硫黄の性質(色、酸性の強さ、酸化還元)
  • 二酸化硫黄の製法
  • 硫化水素と二酸化硫黄の反応
  • 硫酸の性質
  • 接触

 

3.15族元素

 

4.14族元素

 

5.1,2族元素

 

6.遷移元素

  • 遷移元素と典型金属元素の違い
  • 過マンガン酸カリウムの色、酸化剤としての反応(酸性条件、中性・塩基性条件)
  • 酸化マンガン(Ⅳ)の酸化剤としての反応
  • 二クロム酸カリウムの色、酸化剤としての反応
  • クロム酸カリウムの色
  • 二クロム酸カリウムとクロム酸カリウムの変換
  • 鉄の化合物(イオンの色、水酸化物の色、検出反応)
  • 鉄の製錬
  • 銅と酸化力のある酸との反応
  • 銅の化合物(色、水への溶解性、錯イオン)
  • 銀と酸化力のある酸との反応
  • 銀の化合物(色、水への溶解性、錯イオン)

 

7.気体の製法

  • 中和反応で得られるもの
  • 酸化還元反応で得られるもの
  • 熱分解で得られるもの
  • 乾燥剤
  • 捕集法

 

8.金属イオンの分析

  • 系統分析(どの沈殿ができるか、操作に関する注意点)
  • 硫化物の分別
  • モール法

【大学入試】夏休み明けの基礎定着確認リスト(理論化学編)

ふと、化学の基礎を固める、とは具体的にはどういうことだろうかと考えていた。一言で言えば、教科書傍用問題集(リードα、セミナー、センサー、ニューグローバルなど)の問題を難なく解けて、しかも思考プロセスが解説に書かれているものと一致している、という状態が基礎が固まっているということなのだが、それを確認するためのリストみたいなものがあればいいなと思い、ラフではあるが作ってみた。大学入試を控えている方々の参考になれば幸いだ。今回は理論化学について。化学基礎のみを必要とする人でも大半は使える。ラフなので、もしかしたら随時修正するかもしれない。

 

なお、このリストが全部チェックできてさえいれば大学入試対策が万全というわけではもちろんない。リストのチェックはゴールではなくスタート地点である。これらを個々の問題に応じて自由自在に使いこなすためには、やはり問題演習が必要となる。その際に闇雲に問題を解くのではなく、これらの項目を根拠を持って使うことを強く意識する必要がある。

 

1.原子、結合、周期律

  • 原子を構成する要素と、それらの特徴について説明できる
  • 原子番号20番までの周期表上の位置、およびその電子配置をスラスラ言える
  • イオン化エネルギー・イオン半径などの周期律を電子配置に関連づけて説明できる
  • 原子間の結合がどの化学結合なのかを分類できる
  • ファンデルワールス力と水素結合の違いについて説明できる
  • 様々な結晶の性質を、化学結合の性質に基づいて説明できる
  • 単位格子(体心・面心)に含まれている原子の個数/配位数/原子半径を計算できる

 

2.物質量の計算と化学反応式

  • 様々な単位変換を、変換の丸暗記に頼らず比例関係に基づいてできる
  • 化学反応式を、両辺の原子数のつりあいを意識して書ける
  • 化学反応式を用いた計算ができる(過不足ある、なしどちらも)

 

3.中和反応

  • 代表的な酸、塩基の化学式をスラスラ書ける
  • 中和反応の反応式を、水素イオンのやりとりを意識しながら書ける
  • 弱酸塩、弱塩基塩の反応を、電離の逆反応を意識しながら書ける
  • 塩の液性、分類を正確に答えられる
  • 中和滴定に用いる器具、指示薬とその使い方の注意を正確に答えられる
  • 強酸ー強塩基、弱酸ー強塩基の滴定曲線を描ける
  • 中和反応の量的関係を、水素イオンのやりとりに基づいて計算できる
  • (理系のみ)二段階中和の解き方を説明できる

 

4.酸化還元反応、電池、電気分解

  • 酸化剤、還元剤が何かを答えられる
  • 原子の酸化数をスラスラ計算できる
  • 酸化剤、還元剤の酸化数がどう変化するかを答えられる
  • (理系のみ)酸化還元反応の反応式を半反応式から書ける
  • 酸化還元反応の量的関係を、電子のやりとりに基づいて計算できる
  • 金属と金属イオンもしくは酸との反応を、イオン化傾向に基づいて判断できる
  • ダニエル電池の電極、電極における反応、素焼き板の意義を正確に答えられる
  • (以下、理系のみ)
  • 鉛蓄電池の電極、電極における反応、充電を正確に説明できる
  • 燃料電池の電極、電極における反応を答えられる
  • 電気分解の陽極、陰極がどちらかを判断できる
  • さまざまな電気分解における反応の反応式を正確に書ける
  • 電池、電気分解における量的関係を、電子のやりとりに基づいて計算できる

 

----ここから化学の範囲----

5.気体・飽和蒸気圧

  • 気体のパラメータ(圧力、体積、物質量、温度)実験操作の前後で一定であるもの、変わるものを、図を描きながら正確に把握できる
  • 状態変化する気体について、全て気体なのか一部液体なのかを判断できる
  • 実在気体がなぜ理想気体からずれるか正確に説明できる
  • ファンデルワールス状態方程式を説明できる

 

6.溶液

  • 蒸気圧降下がなぜ起こるのかを、粒子の挙動に基づいて説明できる
  • さまざまな溶液の沸点、凝固点がどう変化するか、またその変化の程度を把握できる、もしくは計算できる
  • 冷却曲線のグラフの変化を説明できる、冷却曲線から凝固点を求められる
  • 浸透圧がなぜ起こるのかを、半透膜を介した粒子の移動に基づいて説明できる
  • U字管を用いた浸透圧の測定について理解できる(浸透前後の浸透圧は同じか異なるか、浸透後の浸透圧はどうやって求めるか)
  • 親水コロイドと疎水コロイドの違いを説明できる
  • 塩析と凝析の違いを説明できる
  • その他、コロイドの用語について説明できる

 

7.反応速度

  • 反応速度の定義を言える

  • 反応速度が増大する要因3つと、それによりなぜ反応速度が増大するかを説明できる
  • モル濃度の継時的変化に関する実験結果から、反応速度を計算できる

 

8.化学平衡

  • 化学平衡に達するまでの反応速度の変化、濃度の変化について説明できる
  • 化学平衡の法則がいつ成立するのかを理解できる
  • ルシャトリエの原理に基づいて平衡の移動する向きを決められる
  • 弱酸(弱塩基)水溶液の水素イオン濃度を電離定数を用いて求められる
  • 弱酸塩(弱塩基塩)水溶液の水素イオン濃度を電離定数と水のイオン積を用いて求められる
  • 緩衝液がなぜ緩衝作用を示すか、反応式を用いて説明できる
  • 緩衝液の水素イオン濃度を電離定数を用いて求められる
  • 緩衝液の水素イオン濃度から、化学種(未電離のものと電離後のもの)の比が求められる
  • 溶解度積と溶解度の違いを理解できる
  • 溶解度積を用いて、沈殿ができるかどうかを判断できる
  • 溶解平衡に達したときのイオン濃度を溶解度積を用いて求められる(同濃度・同体積の水溶液を混合した場合、異なる濃度・同体積の水溶液を混合した場合)

 

2022.7.7 更新

 

 

 

化学の計算で「サボる」

今週のお題「サボる」

 

初めて運営の出すお題にチャレンジしようと思う。普段は仕事関係、すなわち受験指導について書くことが多いので、今回もそれに絡めて書いてみる。

 

どうも「サボる」という言葉にはネガティブな意味が込められていて、とにかく何でもかんでも「サボる」ことを忌避しようという傾向があるのだが、決してそうではない。もちろん授業を「サボる」、仕事を「サボる」など、悪い意味での「サボる」もあるのだが、全てがそれに当てはまるわけではない。「要領よくこなす」「時短する」ことも「サボる」ことだと思うので、いい意味で「サボる」ということは効率的に勉強を進めたり、手早く問題を解いたりする上では大切なことだと思う。

 

特に受験生が気づいていないのは計算問題で「サボる」ことである。例えば、次のような計算問題が出てきたらどうしたらいいだろうか?

 

0.80 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液12.5 mLに含まれる水酸化物イオンの物質量は何molか。

 

中和反応の計算問題でよく出てくる話だ。まず、数式については次の通りである。ここも丁寧に話せば色々と語れるのだが、今回は本題ではないのでそれは割愛したい。

 

0.80×12.5/1000

 

なんてことない計算であるが、あることを心得ていればより簡単に計算をすることができる。それは「小数よりは分数の方が計算が楽」であることだ。分数であれば約分ができ、より式を簡単にすることができる。もちろん小数でもできなくはないのだが、約分できることに気づくのは圧倒的に分数の方が楽だ。

 

今回であれば、0.125=1/8であるから、それに気づけば、

 

0.80×12.5/1000=0.80×0.125/10=0.80×1/80=0.010

 

と計算できる。計算が簡単なので、計算ミスもしにくくなる。今回は単純な例なので、それこそ頭からゴリゴリ計算した方が早いのかもしれない(実際そういうスタンスは大事)けど、もう少し式が煩雑になれば、より有効であることが分かるかと思う。

 

もう1つ例を挙げてみよう。高校化学の知識が必要なので恐縮だが、次の問題はどうだろうか。

 

CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2Oで、標準状態で11.2 Lのメタンを完全燃焼させると、水は何g生じるか。原子量はH=1.0,C=12とする。

 

常套手段でいくのであれば、次のような解き方になるだろう。

 

「係数比=モル比」なので、まず単位をmolにしよう。すなわち、反応したメタンは11.2/22.4=0.50 molである。したがって、生じた水は0.50×2=1.0 molであるから、求める質量は1.0×18=18 gである。

 

 しかし、私は特に出来の良い生徒が相手であれば「数値をモルに変換するな」と指導する。それでも問題は解けるのだ。化学の計算の本質は比例計算にある。そこに注目すれば、次のような解き方になる。最初にモルを想定しているので、完全にモルを使わないわけではないが、少なくとも計算過程ではモルを用いていない。

 

ここで例えば、1 molのメタンが反応したとしよう。そのときに2 molの水が生じる。これを言い換えれば、標準状態で22.4 Lのメタンから、36 gの水が生じることになる。いま反応させたのは標準状態で11.2 Lのメタンであるから、生じる水の量も半分になる。したがって、生じた水は18 gである。

 

もちろん、まずは多少煩雑な数値計算を確実にこなしたり、定石を覚えてそれを使えたりすることが大事であるが、さらにステップアップを目指すのであれば、いい意味で「サボる」ことを考えることは大切である。より良い解き方の模索に貪欲になって欲しいと思う。

 

 

 

私が博士号を取得するまで(4)

無事に内定をもらえたのはいいのだけど、肝心の研究は相変わらず鳴かず飛ばずだった。

 

一つ目の理由としては、もともと応用研究主体のラボであるにも関わらず、基礎研究ど真ん中の研究をやっていたことだ。しかもそれがラボの中心となるテーマとは若干外れていることも大きかったと思う。本来、ラボの研究というのは、個々は違った研究をしているけれど、それは枝葉の問題であり、大きな幹としては多くても2つないし3つの主要テーマが組織的に進められていることが多い。その幹にも含まれないようなテーマだった。もっとも、後輩がそれに関連したテーマで画期的なシーズを見つけたこともあり、そっちの方向にはかなり発展したようだが。そういうものを嗅ぎ取る嗅覚も私は持ち合わせていなかったのだろう。

 

二つ目の理由としては、私の研究テーマ自体が、学部時代から一貫しているようでブレブレだったことだ。同じようなことをこねくり回すのではなく、前進していかなければならないのが研究である。だから、ちょっと違うことはやっていかなければならないのだけど、必ず和集合は担保した上でやっていかなければならない。その点についても、後の祭りではあるが、私はあまり気にかけなかったこともあり、和集合がギリギリあるかないかといったところだった。そもそもの研究の進め方も適切ではなかったのである。

 

なぜこういうことになったのかといえば、当時の私のパーソナリティ、この一点に尽きると思う。今でもそうなのだが、私は独力で問題解決をしようとする傾向が強く、人に質問することを億劫だと思う人間だった。そもそもの研究の進め方も、根掘り葉掘りラボの先輩や教員に尋ねればよかったのだが。結局は自業自得だったのだ。

 

それでも新しくこられたスタッフの尽力もあり、精神的に参りかけるときもあったのだが(特に博士課程を留年した年の夏はかなり辛かった)、遅ればせながら少しずつ研究の進め方の作法を身につけていき、なんとか海外のジャーナルにアクセプトされ(それれなりにインパクトファクターがあるところだったのでよかった、リバイス4つはなかなかしんどかったけれど笑)、公聴会でもボコボコにされてまた精神的に参ったのだが(公聴会の晩は胃酸の出過ぎなのか、腹痛で夜中に目が覚めた)、なんとか博士号を取得することができた。私が博士課程を修了した年は、隣近所のラボでも博士課程を修了する人が比較的多くて、そのときは少し孤独が紛れた。

 

まあここまでひどいダメ院生はそうそういなかっただろうと思う。言葉を悪くしていえば、私のラボの一員としての生活は、自分で言うのもなんだが、空白の時間だった。アカデミアに対して未練がないといえば嘘になるが、ある程度作法を身につけたとはいえ、もはや私にここに戻る資格はないと思っている。就職してからほどなく、アカポスの誘いが来たのだがそれも断った。先述の通り、私の居場所はそこにはないと思っていたし、自分が社会に貢献できる人間となる最後のチャンスとして、高い熱量をもって追求できる今の仕事に邁進したかった。

 

私がこのラボにいたという事実は無かったことにしたいと今でも思っている。ただ、こういうことをしてはいけない、ということは人よりは話すことができるため、それは機会があれば後の世代の方々に語っていければと思う。私のような学生を再生産しないために。それが、博士号を取得した私の、唯一可能な社会に対する還元の方法だし、ある意味で贖罪でもある。

 

これから博士課程を目指す方、現在博士課程を目指す方は、

 

  • とにかく困ったら誰かに訪ねること
  • 中長期的な研究のロードマップを意識すること

 

は肝に銘じていただきたいと思う。私を反面教師として。

 

終わり。

私が博士号を取得するまで(3)

かくして、人生で二度目の就職活動を始めることになった。以前は研究職しか目になかったのだが、いったん白紙にして、ゼロベースで果たして自分が社会貢献として何をしたいのか、何が合っているのかを考え直した。

 

このときは「絶対内定」という本を参考にした。この本はかなりボリュームがあり、自己分析などにおいてもかなりの負担を求められるが、自分の価値観が明確でない場合はオススメだ。もちろん、推薦入試など、一般的に志望理由が求められるものであれば通用すると思う。私も推薦入試の志望理由書を添削する機会があるのだが、そのときもこの本で学んだことがかなり参考になっている。

https://www.amazon.co.jp/dp/4478110581

 

合同説明会でいろんな職種を見た。合同説明会の意義については賛否あると思うのだが、これも自分のやりたいことが明確でない場合は是非参加することをすすめる。本当は中小企業についても自分で調べてアタックした方がいいのだが。その際に「自分はこういう大学生活を送ってきたからこういうことをやるべきだ」という先入観を徹底的に排除することが大切だと思う。自己分析を通して、思わぬ価値観を知る可能性だってある。私も生命保険や銀行なども見た。結局合わないと思って切ったけれど。それで、業界はコンサルと教育に絞り込んだのだが、どうもコンサルも社風的に合わないところが多々あって(全部が全部そうではないのだが)、あとはやはり自分は教えることが好きだということに気づき、教育業界一本に絞り込んだ。私は教授という仕事に憧れてはいたのだが、それは研究のスペシャリストになりたいというよりは、誰かに物事を教えて育てたい、という動機の方が強かったのだ。

 

さて、就職活動であるが、1度目は最初の選考で早々に切られることが多かったのだが、今回はかなり選考を先に進めることができた。

 

よく言われるのが面接はデートみたいなもの、意中の人に想いを打ち明けるものということだが、これはかなり的を射ていると思う。面接となると、どうしても萎縮しがちになり、落とされる試験みたいなもので捉えられるのだが、一言でいえばマッチングなのだ。お互いがお互いを受け入れられるかを確認する機会なのである。だから自分の価値観とかは思いっきりさらけ出した方がいい。飾った自分で内定が取れたとしても、おそらく入社後にギャップに苦しむことになるだろう。私がこういうことを意識することができたのは、博士課程のうちにビジネス本を読み漁ることがあり、その中でコミュニケーション関係について知識を得ることができたこと、また、試薬や備品の業者さんと見積もりなどで話す機会が頻繁にあり、度胸が確実に修士課程の頃よりもあったからだと思う。

 

しかし実際には大変だった。当時はリーマンショック後で、1度目の就職活動とは真逆に厳しい状況だった。それに、教育業界は学部卒を採用する傾向が強い(実際志望者でも院卒はあまりいない)。最終面接1つ前とか、最終面接で落ちてしまうことが何度もあった。それでも何とか内定をいただくことができた。いわゆる最後の「持ち駒」での内定だった。

 

とりあえず来年以降の見通しは立った。しかし本当に苦しいのはここからだった。

 

今回は就職活動のアドバイスみたいな話に終始しました(笑)続く。

私が博士号を取得するまで(2)

結局博士課程に進学したのだが、研究を何となくやりたいなと思ってはいたものの、強烈な動機付けがあるわけではなかった。それに、自分自身の研究テーマも、お世辞には言えないほど順風満帆ではなかった。むしろ茨の道だった。

 

博士課程ではこういった研究成果の産みの苦しみも大きいのだが、何より大きいのが人間関係の希薄化である。ほとんどの同級生は修士課程を修了すると就職するため、同世代の仲間が急にいなくなる。私の代は比較的博士課程に進学する人が多かったのだが、当然別のラボであるからほとんど会うことはない。それに私自身、今もそうだけど、そんな仲間とワイワイやるということを積極的にやる人間ではなかったし、、、

 

所属するラボでも、修士課程までであれば後輩とは割と兄弟姉妹のような関係でいられるのだが、博士課程だとそうはいかない。私がラボに入ったときにも博士課程の人はいたものの、やはり雲の上の人というか、ちょっと近寄りがたいな、という感覚はあった。後輩が敬遠するという、これまでにない状況に直面するのである。

 

、、、とまあ、なかなかに過酷な環境ではあるが、それでもうまく人付き合いをこなしたり、順調に成果を出す博士課程の学生もいる。たまたま私がそうだっただけのことなのだろう。

 

結局、研究テーマを少し変えるなどして、少しずつではあるが好転してきた気配はある。それでもなかなか研究成果も出ず、私自身もそこまで研究に没頭するような学生ではなかった。正直、研究というものをどこかで舐めていたところはある。そういうわけで、規定を満たすことができず、博士課程は留年することに。おまけに就職活動をしたら、というボスの勧めもあり、二度目の就職活動をすることになる。本来、就職活動を促されるというのは、将来のポスドクになりうる人間にとっては、ある意味で戦力外通告に等しい。もはや万事休す、といった感じではあるが、私自身もこの先アカデミアに残ってやっていけるかという自信もなく、そもそも研究に対する熱量も低下していたので、気持ちを切り替えて就職活動をすることになる。ああ、私は研究が好きだというよりは実験が好きなのだなあ、と改めて振り返る。もっと早く気付けば良かったのだが、、

 

続く。