ツキアカリテラス

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化学の計算で「サボる」

今週のお題「サボる」

 

初めて運営の出すお題にチャレンジしようと思う。普段は仕事関係、すなわち受験指導について書くことが多いので、今回もそれに絡めて書いてみる。

 

どうも「サボる」という言葉にはネガティブな意味が込められていて、とにかく何でもかんでも「サボる」ことを忌避しようという傾向があるのだが、決してそうではない。もちろん授業を「サボる」、仕事を「サボる」など、悪い意味での「サボる」もあるのだが、全てがそれに当てはまるわけではない。「要領よくこなす」「時短する」ことも「サボる」ことだと思うので、いい意味で「サボる」ということは効率的に勉強を進めたり、手早く問題を解いたりする上では大切なことだと思う。

 

特に受験生が気づいていないのは計算問題で「サボる」ことである。例えば、次のような計算問題が出てきたらどうしたらいいだろうか?

 

0.80 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液12.5 mLに含まれる水酸化物イオンの物質量は何molか。

 

中和反応の計算問題でよく出てくる話だ。まず、数式については次の通りである。ここも丁寧に話せば色々と語れるのだが、今回は本題ではないのでそれは割愛したい。

 

0.80×12.5/1000

 

なんてことない計算であるが、あることを心得ていればより簡単に計算をすることができる。それは「小数よりは分数の方が計算が楽」であることだ。分数であれば約分ができ、より式を簡単にすることができる。もちろん小数でもできなくはないのだが、約分できることに気づくのは圧倒的に分数の方が楽だ。

 

今回であれば、0.125=1/8であるから、それに気づけば、

 

0.80×12.5/1000=0.80×0.125/10=0.80×1/80=0.010

 

と計算できる。計算が簡単なので、計算ミスもしにくくなる。今回は単純な例なので、それこそ頭からゴリゴリ計算した方が早いのかもしれない(実際そういうスタンスは大事)けど、もう少し式が煩雑になれば、より有効であることが分かるかと思う。

 

もう1つ例を挙げてみよう。高校化学の知識が必要なので恐縮だが、次の問題はどうだろうか。

 

CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2Oで、標準状態で11.2 Lのメタンを完全燃焼させると、水は何g生じるか。原子量はH=1.0,C=12とする。

 

常套手段でいくのであれば、次のような解き方になるだろう。

 

「係数比=モル比」なので、まず単位をmolにしよう。すなわち、反応したメタンは11.2/22.4=0.50 molである。したがって、生じた水は0.50×2=1.0 molであるから、求める質量は1.0×18=18 gである。

 

 しかし、私は特に出来の良い生徒が相手であれば「数値をモルに変換するな」と指導する。それでも問題は解けるのだ。化学の計算の本質は比例計算にある。そこに注目すれば、次のような解き方になる。最初にモルを想定しているので、完全にモルを使わないわけではないが、少なくとも計算過程ではモルを用いていない。

 

ここで例えば、1 molのメタンが反応したとしよう。そのときに2 molの水が生じる。これを言い換えれば、標準状態で22.4 Lのメタンから、36 gの水が生じることになる。いま反応させたのは標準状態で11.2 Lのメタンであるから、生じる水の量も半分になる。したがって、生じた水は18 gである。

 

もちろん、まずは多少煩雑な数値計算を確実にこなしたり、定石を覚えてそれを使えたりすることが大事であるが、さらにステップアップを目指すのであれば、いい意味で「サボる」ことを考えることは大切である。より良い解き方の模索に貪欲になって欲しいと思う。