ツキアカリテラス

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2023年度京都大学化学の入試問題を解いてみた

ここ数年に比べると重厚さはやわらいだ印象ですが、定量的考察やパズル感覚での構造の捉え方が相変わらず強く要求されます。特に今年はその傾向が顕著で、温故知新と言いますか、昔の京大らしさを解いていて感じました。

 

大問1:前半は黒鉛の結晶。問3はどの原子を数えるかに注意。後半は鉄の精錬に関する問題。平衡定数との大小関係を考察するのは平衡でも最重要の考え方。純粋に化学平衡として難しい部分はないが、終盤はやや面倒。ここは数式よりも座標平面で領域として考えた方が楽。このような数学的処理は京大では非常に好んで出題される。

 

大問2:ラウールの法則に関する問題。状態3は類題が最近の阪大であった。式の形をよく見て考えなければならない。問5は式の形から二次方程式をイメージできるか。それよりも問4が難しい。それぞれを理想気体と考えると詰む(おそらく分子間相互作用のため、そこからずれるものと思われる)。式(2)が液相のモル分率に依存せず成り立つことから、これを用いればよいと気づけるか。

 

大問3:ピリジン環をもつ化合物の構造決定。難しくはないがかなり思考させる問題で、シンプルながら良い問題。原子数に対する意識をどれだけ強く持てるか。

 

大問4:アミノ酸の形ではあるが実質、構造決定問題。ここも原子数に対する意識がポイント。不斉炭素原子の増減も考慮しなければならないが、これは近年の難関大ではトレンドのネタなのでものにしたいところ。

なぜ私はツキアカリなのか

何かで「教師は太陽であれ」という言葉を聞いたことがある。

調べてみたら、TOSSで有名な長谷川博之さんらしい。

「黄金の3日間」の具体的なことが知りたくて著書を読んだので知った。

(この本は大変参考になった)

太陽のようにあたたかく生徒を照らす存在であれ、ということらしい。

これは正論である。

 

これと対比して、「教師は月であれ」という言葉もあったはずである。

残念ながら、出典を失念してしまった。

月のように落ち着いて安心感を与える存在であれ、ということだと思う。

これもまた正論である。

 

もともと内気だった私は、そもそも太陽になんてなれないと思っていた。

それに、周囲を照らすほどにキラキラした人生も歩んでいない。

「ひっそりと咲く月見草」と故・野村克也さんは語ったが

まさにそんな生き方をしてきた。

 

そう、月だ。

私にはカリスマ性など持ち合わせていない。

だが、安心感を与えることはできる。

これは自覚していないのだが、周囲の多くがそう言うのだから間違いないだろう。

それに、私は教師−生徒の関係では生徒が主人公だと思っている。

この考えは決して揺らぐことはないだろう。

 

先頭に立ってみんなを引っ張る存在でなくてもよい。

むしろ、最後方からみんなを見守る存在でも良いのではないか。

太陽の光を受けて行き先を照らす月のように。

 

今日も、誰かを照らす月明かりとなる。

2023年度神戸大学化学の入試問題を解いてみた

ここ数年は標準的な問題ばかりでしたが、今年は大幅に難化。2010年以前にも大問1つくらいはこれくらいの難しめの問題が出ていましたが、今回は大半がそういった問題でした。特に大問3が難しいです。

 

大問1:「印加」の表現は難しいがこういう表現は慣れるためにも入試問題で積極的に使って欲しいと思う。問1は簡単そうで面食らうかも。問2は問題文の「なお」以降をちゃんと読まないと塩化銀水溶液=水の電気分解と誤解してしまう。問3は有効数字の指定がないのでpHに合わせて1桁とするのが良いだろう。液量が100mLであることに注意。問4は思考力を要する。名称で答えるのか化学式で答えるのかの指定がないのが悩ましい。問5は比較的解きやすいのでこれを先に解くのが賢い作戦か。

 

大問2:問1は塩化物イオンの変化量がわずかで無視できるということに気づけば計算は楽。それでも面倒なので、後回しにした方が良い。問3は新しい問われ方で面白い。問6は12族元素であるカドミウム遷移元素とするかどうか悩ましい。問8は単位に注意。

 

大問3:環状エステルで炭素間二重結合をもち、おまけに加水分解でケト–エノール互変異を起こすといった盛りだくさんの化合物に関する構造決定。非常に良い問題だが、受験生のレベルを考慮すると超難問。神戸大でもこのレベルの出題がなされるようになったことは今後注意が必要。オゾン分解により二重結合の切断が起こることを知っていなければ解けない。問6はトランス付加は考慮しなくても大きな失点にはならないと思われる(阪大ですら但し書きをつけるのだからこれをノーヒントで考えさせるのは酷すぎる)。環状構造が非対称なので(トランス付加さえ考慮しなければ)そこまで難しくはないが、構造式を書くのに時間がかかる。

 

大問4:糖類に関する問題。問5以外は落とせない。問5は細かい知識なので、できなくても悲観しなくて良いだろう。

2023年度大阪大学化学の入試問題を解いてみた

今年もこの時期がきたので自己研鑽もかねて解いていきます。

 

全体的な難度は例年並みで(物理が大幅に難化した分易しくなった印象を受けがちだが決して易しいとは感じなかった)、ここ数年高止まりの印象。ただ、例年よりも易しい問題と難しい問題の難度差が大きく開いた印象でした。かなり以前はこういうセットが多かったので、その傾向に近い形だと感じました。

 

大問1:電離平衡の問題。物質バランス・電荷バランスの式を立てるといった、テーマとしてはありふれた問題。大昔にアンモニアの電離平衡で類題が出ている。ただ、やや問題文が不親切なので少し行間を読む必要があった。また、後半のグラフ描図の問題を考え込まずに解けたかどうかもカギになるのでは。特に低濃度のときにどこまで厳密に議論すべきかが悩ましい。

 

大問2:気液平衡に関する問題。この手の問題でありがちな定積条件ではなく定圧条件であることに注意。そこまで難しくはないが状況把握力が試されるので、差がついたと思われる。問6で201℃の温度設定の意図が分かるので解ければかなりスッキリする。

 

大問3:反応理論とラセミ体に関する問題。単純な知識問題が多いが、問題数が多いので多少焦るかも。問1と問4はできなくても悲観しなくて良いだろう。それよりもそれ以外の問題を平常心を保って正解できたかが大切。問3はシス-トランス異性体の存在に注意。問7は良問、だが「分子式」に戸惑うかも。問9は反応機構が分からなくても思考で解答を導ける(というより、そういうスタンスで解くべき問題だと思われる)。

 

大問4:糖類に関する問題。どれも標準的なので完答を目指したい。慌てて構造式で原子の書き忘れがないように注意する。

ONE PIECE FILM RED終映

昨日、ONE PIECE FILM REDの終映ということでレイトショーにて鑑賞してきた。もともと1度見ていたので2度目の鑑賞だったのだけど、全体のストーリーが分かってからまた見ると全く違うように見えてしまうのが面白い。あ、こういうところで伏線張っていたのね、とか。

 

普段あまり映画を鑑賞しないのだが、これは非常に面白かった。たぶん明快な勧善懲悪ものよりも、善悪の区別がはっきりしていないコンセプトが好きなのかもしれない。私がジブリで一番好きな映画が「もののけ姫」だということを考えると(私の中ではジコ坊は悪とはみなしていない)。今回も強いてヴィランがいるとしたらトットムジカくらいで、ウタはもちろんそういう枠ではない。しかし、トットムジカみたいなえぐい歌詞を少女のウタが歌うなんて想像できないなあ笑

 

あとは何と言っても楽曲である。もともとAdoは好きだったし、そこに中田ヤスタカやMrs.GreenAppleなど好きなものが合わさったら、もう大好き以外の表現が見当たらない。もちろん、他の曲も秀逸。普通、歌詞がいいけど曲が、とか、曲がいいけど歌詞が、とかは結構あるのだけど、今作はどれも歌詞も曲も高品質である。とりわけ、歌詞は実は尾田栄一郎が書いていたんじゃないか、ってくらい見事だった(入れ知恵はもしかしたらしていたのかもしれないが)今回は音楽が一つのモチーフだということもあり、相当に気合が入っていたものと思われる。

 

で、シャンクスがかっこよすぎた。さすが四皇。めざましジャンケンでこれでもかというくらいイジられていたのに笑、あれはずるい。惚れてしまう。

 

一方でアニメ、特に劇場版って社会的なメッセージも含まれていると思っているのだけど、今回もその例に漏れなかったと思う。ウタはエレジアでは崇められていたのだけれど、それが排斥の論理につながる危うさを持ったり、それをめぐる争いや分断についても描写されていて、ここ最近の風潮も反映されているのかなと思った。昔はこういうのはテレビや対話を媒体とするものだったのかもしれないが、今はやはりSNSだと思う。そして、先に述べたような、悪い意味での教祖と信者の関係であったり、分断であったりはここ最近でさらに顕在化してきた気がする。ウタは新時代でそういったものを全否定する世界を作り上げようとするのだが、結局それはベストな策ではない、そういう諍いも起こりうる中でどう折り合いをつけてやっていくか、というのが大事なのではないか。「争いのない世の中など存在しない」というセリフがあったが、そう考えるとこのセリフは非常に刺さる。

 

いやあもう、全方向的に楽しめる映画でした。こういうのは久々。

 

最後に、ウタがルフィを殺そうとするところでなんとなくそうじゃないかと思って、動画で同じような解釈していた人がいたので貼っておく(他にもネット上では似た憶測が散見されるが)。

ただセイレーンまでは気づかなかったな。なんで羽が生えるのかと思ったら納得。

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寝てしまってすみません

このご時世で色々変わったことはあるが、特に生徒に関して言えば昔よりも精神的に病むケースが顕著に増えてきた。もちろんこれをご時世のせいだとか、本人の心が弱いからだと言うつもりは全くない。自分以外の何か他のものに責任を求めても何の解決にもならないのだから、その中で我々大人がどう寄り添っていかなければならないかを考えなければならないと思う。

 

これに関連して、次のようなものもここ数年でよく見るようになった。

 

何かというと、出席カードに「寝てしまってすみません」という懺悔の言葉である。

 

こういうメッセージをもらうと、自分としてはすごく悲しくなる。それは寝られてしまったからではなく、なんて世知辛い世の中を生きているんだろう、そして我々大人がそう生かせてしまっているんだろう、と思うからである。昔は口を開けて寝ていた生徒もいたくらいなのに(笑)

 

もちろん授業中に寝ることはアリかナシかと言えばナシだ。だから私も時々巡回に行って(私は授業中よく巡回するタイプの教師である)起こす。肩を叩いたり、真横で足音をわざと大きくしたり、机の端を叩いたり、あるいは眠そうだったらわざと視線を気持ち長めに向けたり。

だが学校の課題が立て込んでいたり部活動で忙しかったりすると、そうもいっていられない。休んでスッキリした状態で授業に臨めば?という意見はあるだろうし、私だってそう思うことは時々あるけれど、それでも頑張って教室に来ているのだ。生徒たちはいい意味で欲張りだと思っている。二兎を追うなら這いつくばってでも二兎を得るのだ。私だって授業が退屈であれば机に突っ伏していた。寝ること、いや、寝て“しまう”と言った方がいいだろう、それは絶対悪ではないと思っている。

 

それなのに、こういうメッセージをもらうのである。本人の価値観がそうさせたのか、それまでの経験から寝ることに対する罪悪感が過度に強くなってしまったのか分からないが、あまりにも怯えている、自分を責めすぎている様子が文面からありありと浮かんで申し訳ない気持ちになるのだ。その点でも彼ら/彼女らの心が脆弱になっているように感じる。

 

だからと言って「私の授業では思いっきり寝ていいよ!」とはさすがに言えない(笑)ひとまずは寄り添いつつ、今日も明日も巡回して起こすしかない。

人は見た目が9割、店舗は受付が9割

ちょっと昔の伝聞なのだが、ある店の会員になる際に、のっぴきならない事情で初回の利用をキャンセルせざるを得ず、そこからだいぶ日が空き、月をまたいでしまった(ちなみにこのときに会員登録の契約はまだ交わしていない)。

 

それで、改めて契約も兼ねて初回利用を申し込んだときに、受付からなぜか2ヶ月分の金額が請求(つまりキャンセルされた分が初回=登録とみなされていた)という。もちろん規約にもそのようなことはない。ないと言えば嘘だ。まだ契約前なので規約がどういったものか把握されていない。しかし、事前説明はもちろんなく、そもそも契約前である。それだったら通りすがりのオッサンから利用料を請求するのと同じではないか。

 

結局、請求は1ヶ月分でOKということになったのだが、その後の受付の応対も今ひとつよろしくなかったという。

 

こんな事例が珍しいのか珍しくないのか、私にはてんで分からない。幸い、私は強運の持ち主なのか、継続的に利用する店舗であまりひどい目にあったことがないからだ笑

 

とは言え、受付の応対がよろしくなかった/手違いだったために、不満をもったことは私にだって何度かある。そういう店舗は何も言わぬまま二度と利用しないことにしている。あれ・・・だから店舗を利用する機会のうち、ひどい目に合う回数が少ないだけでは?笑

 

人は見た目が9割だと言われるが、店舗は受付が9割だと思っている。そこに正社員もアルバイトも関係ない。客から見れば「その店の人」扱いである。そして、その受付の応対がひどければ「あの店はひどい」とそこらの口コミサイトに書かれてしまっても言い逃れはできないと思う。受付に限らず、顧客と接するときはそういったプレッシャーと隣り合わせになって応対しなければならないと思うし、厳しい言い方をすればその覚悟がなければ対面で顧客と接する仕事は担当しないほうがいいと思う。もっと適した仕事に携わればいいと思う。

 

最近職業病なのか、私自身、教育サービス業に従事しているので、受付の応対というのがすごく気になるようになってしまった。これが老害でないことを願う・・・