ツキアカリテラス

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生物の勉強法

私は化学を教える仕事をしているが、実は専門はバリバリの生命科学である。だから生物の質問を受けることもしばしばある。特に定期考査前は質問が多い。

 

ところで、学校のカリキュラムのため、本来物理と化学を選択するのであっても、生物を履修しなければならないケースはかなりある。私も高1の頃は化学がメインで、半期で生物と地学をやり、高2以降は化学+物理・生物・地学のいずれか、といった特殊なカリキュラムだった。だから地学もほんのちょっとだけは分かる。それで、もう私は物理と化学を選択する!といった高校生も少なからずいるわけで、その場合は生物が結構な負担になるわけだ。

 

例えば代謝について。光合成や呼吸は色んな化合物や酵素がでてきて、かなりややこしい。どこでNADPHが関わるかとかも含めると気が狂いそうになる。この場合は、落ち着いて教科書や教科書傍用問題集を確認してほしい。基本的にそこに書かれていないことが知識問題として出題されるとは限らないのだ。だから極端な話、そういったものは暗記する必要がない、ということになる(これは他の科目についても当てはまる)。

 

この、教科書に記された知識というのが、実にポイントを突いていて素晴らしいとつくづく思う。ざっくりしすぎず、細かくなりすぎずという絶妙のバランスを保っているのだ。そしてこれを把握するということは、暗記にも有用であると思う。

 

大学に入れば生物学の知識はもっと広くなる。例えば細胞内のシグナル伝達に関しても、多岐にわたる上、同じシグナルであっても細胞によっては異なるはたらきをもたらすものも少なくない。これに関して、学生時代に教わったアドバイスが「シグナル伝達はまず概要を理解せよ」ということである。つまり、細かいこと全部を押さえるのではなく、このシグナル伝達機構は始点はどのような物質で、最終的にどのように機能するのか、レセプターはどのような作用機序をもつのか、転写調節因子であれば核内に移動して直接はたらくのかなど、まずはざっくりとしたあらすじを押さえることが大切なのである。その上で、細かいところを押さえていけば覚えやすいと思う(といってもその細かいところは専門であればともかく、そうでなければその都度調べる、というのがよくあることだと思うのだが)。

 

まずは要所を押さえる。これが特に生物における暗記のコツだと思う。オキサロ酢酸だ、ルビスコだと覚えようとする人に限って、呼吸は酸素を取り込むために行う、光合成は酸素を放出するために行う、といった少しずれた理解をしているケースが多い。そうはならないように気をつけながら、楽しみながら覚えていくのが良いと思う。