ツキアカリテラス

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みんなが使っている参考書はあなたに合うとは限らない(後編)

前回の続きである。参考書や問題集の選び方は、みんなが選んでいるから、人気があるからという理由で選ぶのではなく、自分のレベルと参考書や問題集のレベルを比較して「頑張れば手がとどくレベル」のものに取り組むべきだ、ということだった。

 

では、適切なレベルの問題集で良いのかというと、これも必ずしもそうとは限らないと思うのである。

 

大抵の場合、適切なレベルの問題集といえば、入試標準レベルとなる。そういったレベルで化学であればダントツで人気なのが「化学重要問題集」である。昔であればほぼこの一強であったが、最近はその座を脅かすような問題集も少しずつ増えている。一番の対抗馬は「化学頻出!スタンダード問題230選」であろう。

 

化学重要問題集において、最大のウィークポイントは解説の薄さである。私もよく重要問題集の解説を見せられて、これってどういうことなんですかという質問を受ける。この弱点を補強し、問題についても典型的なものをほぼほぼ網羅したものが「化学頻出!スタンダード問題230選」である。とにかく解説がわかりやすく丁寧である。特に自習メインで受験勉強を進める者にとってはこれ以上の問題集はないのでは、と思う。私自身も、よほどのことがなければこちらの方を薦める。

 

しかし、状況によっては私は重要問題集を薦めることもある。理由は色々あるが、例えば「学校で課題として提出させられる」「レベルの高い友達(大体の場合その当人もそれなりのレベルである)と重要問題集を解くのを競い合っている」の場合である。

 

前者の場合は、受験勉強の負担軽減が目的である。同様のレベルのものを2冊やるよりは、1冊やり切った方がモチベーションも上がるものだ。学校で「化学頻出!スタンダード問題230選」が配られるのであれば私は泣くほどに嬉しいのだが(笑)、そんなわがままも言っていられない。

 

後者の場合は、友達どうしで教え合う、競い合う効果は絶大だと思っているからだ。すなわち、人が集まる場があり、志望校は違うが共通の目的を目指す人たちがそこで助け合い、切磋琢磨し合うことが、大きな教育的効果を及ぼすと思っていて、その点で教室授業はオンライン授業に完全にとって代わられることもないと思っている。その繋がりと熱量を、自分が推す本で介入することは私にはできない。「この本で競い合ってみたら?」という言い方もできなくはないが、それでも多かれ少なかれ、彼らの伸ばそうとする枝を折る行為であり、それが長い目で見たら大きな損失になると思うのだ。もちろん残念に思いながら推薦するのをやめるのだが(笑)

 

相変わらずとりとめもなく書いているが、さすがにそろそろまとめたい。適切なレベルの本であっても、それを激推ししたり薦めなかったりする。昔は、これさえやっていれば大丈夫というような王道の参考書を探し、それを薦めるようなことができればいいなと思っていたが、今はむしろ王道の参考書はないと思っている。みんなが使っている参考書はあなたに合うとは限らないのである。それほどに参考書・問題集選びは繊細な問題を含んでいると思う。まだまだ自分もこういった指導については精度を上げられていないところがあるので、精進したい。