自分に合った階段を上る
多くの塾は、習熟度別にクラス編成をしていることが多い。何かのテストでランクを振り分けているアレである。では、もしあなたが最上位〜最下位まで好きなランクの授業を受講できるとしたとき、どの講座を受講するだろうか。
おそらく「どうせ受講できるならできるだけ上のクラスを」と思う人が多いだろう。もともと志望のレベルが高いのであれば、なおさらそうである。しかし、志望校のレベルに到達するのはずっと先の話である。今そこに手が届くレベルにいるのであれば問題ないが、志望校のレベルと現状のレベルに大きなギャップがある場合、それは逆効果になる可能性もある。
昔、ある生徒を受験学年で担当したことがあるのだが、5月の段階でかなり基礎が抜けていたように見受けられた。しかし、その生徒は昨年まで最上位のクラスを受講していたことが分かった。本来であれば、基礎はしっかりと身についており、なおかつ多少難しい問題でも太刀打ちできるレベルであろうが、入試標準レベルの典型問題ですらおぼつかないレベルだった。本人曰く、昨年までの内容は非常に難しくて全然分からなかったとのこと。ここからいかに基礎をしっかりと身につけていくかの指導が始まったのである。色々手を尽くしたものの、結局私の力が及ばず、残念ながら浪人となってしまった。
逆に、こういう生徒もいた。その生徒は上位ではないクラスにいて、そこで着実に確認テストで高得点を上げて、受験学年で最上位のクラスに入った(それでも特定科目だけは最上位でないクラスをとっていたのは誠に英断だと思う)。土台がしっかりしていたので安定感は抜群。しょうもない答えを出すことはまずなかった。飛び抜けたものがなかったことと第一志望のレベルがかなり高かったので少々不安だったものの、見事に第一志望に合格した。
焦りやプライドもあるのだろう、それでできるだけ高いレベルを望む生徒は非常に多い。しかし、2段飛ばしで駆け上がってケガをするよりも、1段ずつ着実に上がっていく方が最終的に高みに登れることもあるのだ。現状の自分と向き合って、そしてもちろん素人判断をせずに誰かに相談した上で、適切なクラスでの受講をした方が良いのではと思う。